【短】セカンド・ラブ

そして、あたしはなんて馬鹿なことをしてるのだと思った。

自分の過去にすら向き合わず、ただ怯えてるあたしが人のことを言える立場じゃない。

…もう、二度とあんな顔も、あんなこともされたくない。


あたしは半分消えかけた白黒の世界をまた、塗りつぶした。


────…
───…


「えー、新学期から一か月経ちました。もう分かってる人もいるかも知れませんが、遅れながらも新しい先生を紹介をします」


教頭の後ろに数人の真新しいスーツを着た教師の中に見知った顔を見つけた。


「美術担当の、村﨑香奈枝(ムラサキカナエ)です。よろしくお願いします」


その人は長い髪を一つに縛って、化粧がそんな濃くなくて綺麗な人だった。

それを見て数少ない非不良が、頬を赤らめていた。


「国語担当で、2年1組の副担任をやらせて頂いてます。宮根悠些です」


その途端、1組のギャル達が騒ぎ出した。

ちなみにあたしは3組。とりあえず良かった。


と、思った矢先、宮根悠些と目が合った気がした。

でもホントに一瞬だったので、気にすることなくあくびを噛みしめた。

あっちがこちらを見ていたのを知らずに。



「ねえねえ、宮根先生めっちゃカッコ良くない!?」

「カッコいい~、うちらのクラスに来て欲しかったね~」


そんな会話を耳にしながら、あたしは夢の世界に入った。

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