【短】セカンド・ラブ

今回であたしの白黒の世界に少し色がついた気がした。

あたしは、それに気付くにはまだもう少し先。



「…あー、折れてはなさそうだね。でも一応包帯で固定しといた方がいいかな。…で、首席が何やらしっちゃたの」


この保険医は40代のおばさん。しかし何かと話やすいと評判だ。


「…けじめを少し、」

「な、綯捺さん首席なんですか…!」


何故かこの学校の保健室までついて来た亜梨沙。

興奮気味にあたしに顔を近づける亜理沙を左手で押し返す。


「…それ今関係ない」

「うひゃー、凄いです」


進学校でもないんだから自慢することじゃない。

それでも亜梨沙は自分のことみたいに笑った。

つられて笑ってしまいそうなのを必死で耐えた。


「私、ずっと斉藤さんのこと人形みたいで嫌いだったのよ」

「人形…」

「顔立ちも整ってるし、模試の結果も充分進学校にいけるレベルでおまけに運動も出来て、でもそれを淡々とこなしてるみたいで…嫉妬しちゃったのかな」


包帯を巻きながら、何かを思い出すようにふふ、と笑った。


「私ね、それなりに進学校通ってたのよ。でもいつも一番にはなれなくてねー…特に一番にこだわってたわけじゃないんだけどね。私あなたに言ったことあるのよ?覚えてるかしら」


ふるふると首を横に動かす。


「…やっぱり、あなたなんだか自分の世界に閉じこもってる感じだもの」


いつも騒がしい亜梨沙も今は口を閉じて、話に聞き入っていた。

閉じこもってるか、図星だ。


「“そんなんで楽しいことなんてあるの”ってね」

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