【短】セカンド・ラブ

──ああ、思い出した。

確か1年の時にそんなことを突然聞いてきた教師がいた気がする。


『…斉藤さんって毎日つまらなそうね』

『そんなんで楽しいことあるの?』

一気に、淡々と話された。

少し皮肉が混じった言い方をされていらっとしたが、そう思うのも不思議じゃないとあたしは無視せずに答えることにした。


『…そうでなきゃ、生きていけないから』

あたしはその時、自分の眉が下がってたなんて気がつかなかった。



「──本当は、必死に弱いのを取り繕ってるんだなって。案外可愛くて安心したわ」


そう言って指で眼鏡を上げながら、優しく笑った。


「分かります!綯捺さんって可愛いんですよねっ!」

「…可愛い言うな」


そう言っても、顔が赤くなっているからあまり効果がなかった。

そしてタイミング悪く村崎先生と宮根悠些が入って来た。


「折れてなかった?」

「ヒビ入ってても重傷ではなさそうね」


あたしの代わりに村崎先生の質問を、笑ったまま保険医が答えた。


「…なに、近いんだけど」

「なんか顔赤くない?」


いきなり近付いてきた宮根悠些に赤くなってる顔を隠そうとしたらがっちり頭を掴まれてしまった。

近い、近い。余計に顔赤くなりそうだから。

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