【短】セカンド・ラブ
「…そう?別に手以外は赤くないですよ」
清楚系村﨑先生があたしの顔を見ながらそう言った。
今思い出したけどあたし、ポーカフェイス身につけてんだった。
じゃあ、なんでこいつはこんなこと言ってるんだ…!
「赤くない」
「なんで?」
あたしの否定を無視して、理由を問い詰める。
いつの間にか頭を押さえてた手はなくなっていた。
…まだ感覚があってむず痒い。
ふと目線を宮根悠些から離すと、三人共にやにやしていた。
「気のせいだ、馬鹿っ!」
「うお?!」
恥ずかしくなって、目の前にいるこいつの足を引っかけた。
が、ぎりぎりで体制を崩さずにあたしから距離を置いた。
「びっくりしたー」
「あ、綯捺さん帰っちゃうんですか!?」
逃げるように保健室から出ていくと、亜梨沙の声を遮って扉を閉めた。
「あーあ、逃げられちゃった」
宮根悠些が誰にも聞こえないようなくらい小さな声で呟いていたなんて知らずに、あたしは赤くなった頬を自分の冷たい手で冷やしていた。
「綯さん可愛い…!」
「あんたそれあの子の前で言ったら一発で絞められるわよ」
「だって普段は滅多に見られない照れ顔ですよ!?…写真、じゃなくて動画撮りたかった」
「二年でなにがあったのよ」
「ふふ、斉藤さんってあんな子なのね」
その会話をあたしは知らない。