【短】セカンド・ラブ
「あ、もう時間か。じゃあちゃんとこのページの写生やっとけよー」
急いで教科書などを重ねて、颯爽と教室から出た。
それを見送った女子達は姿が見えなくなった途端、うっとりしだした。
「あー、ホント格好いいわ~」
「悠先生さ、未夢ちゃんのこと気に入ってない?」
「分かる!未夢だけ扱いが違うしね」
「もしかして好き、とか?…未夢ちゃんなら許しちゃうかも」
その会話をそこまで聞いた後、教室から出た。
聞かなきゃ良かったかもしれない。
「……痛い」
──なんで聞き流せなかったんだろう。
胸がきりきりと痛む。
「えっ!うちのクラスじゃ悠先生は特別扱いしないよ」
トイレの個室に壁に寄っかかっていたら、宮根悠些の愛称が聞こえた。
「マジだって!何かある度に未夢ちゃんの名前呼ぶの!」
「…未夢ちゃんじゃ勝ち目ないじゃん。しかもライバルとかいう感じじゃないし」
「じゃ、今日合コンしない?実は人探してんだ」
その後、女子特有の高い笑い声が響いた。
…ここでもあの話題か。
あたしはふっと、鼻で笑って壁に寄りかかったまま座り込んだ。
包帯で巻かれてない左手で、胸の辺りを押さえながら彼女達がいなくなるまで待った。