【短】セカンド・ラブ
「あれ、今日早くないですか?」
亜梨沙が驚くのも無理もない。
一週間前からあたしは宮根悠些に捕まって帰りが遅くなったのだから。
でも亜梨沙は奴から聞いたのかあたしが遅れても何も聞いてこなかった。
「…まあ」
「なら、あそこのカフェでゆっくりしませんか?」
あたしは特に悩むことなく頷くと、嬉しそうに笑ってあたしのセーターを掴んだ。
「あたし此処に入ってみたかったんですよ~」
「へえ…、」
そう返事しながら考えるのは、さっきの会話が頭から離れない。
思い出す度に胸が痛くなるから思い出したくないのに、何もしてないと思い出してしまう。
「綯捺さん何します?」
「コーヒー」
「分かりました!頼んじゃっていいですか?」
「うん」
どうしたら忘れられるんだろう、あたしはテーブルに肘をつきながらそればっかり考えていた。
ふと、近くから携帯の着信音が流れた。
「あっ、あたしだ。…ちょっとトイレ行ってきます」
どうやら亜梨沙からかかってきたのは電話みたいだ。
そのしばらく後ろ姿を眺めていたら店員がやってきた。
「お待たせ致しました。コーヒー2つに苺パフェでございます」
あたしは一瞬疑問を感じた。確か亜梨沙ってコーヒーあまり好きじゃないかった気がしたんだけど。
もしかしたら思い違いかもと思ったが、気にする間もなく店員はもう去ってしまっていた。
「…っ、」
いつもはミルクを入れるのに、ぼーっとしてたからそのまま飲んでしまった。