【短】セカンド・ラブ
顔を少し上げると、そこに今にも泣きそうな顔をした宮根悠些がいた。
…一瞬、泣いてるかと思った。
「俺が…嫌いか?」
どうして。そんな泣きそうに聞くんだよ、そんな顔されたら言ってしまいそうだ。
嫌いじゃない、好きだと。
「嫌いじゃない、だから…」
「俺、ずっと綯捺が好きなんだ」
緩くなった腕の力を再度強くして、そう言った。
「は、」
「ホントは、引っ越しなんかしたくなかった。…だから戻ったらどんな形でも言おうと思った、でも、再会した時俺を覚えてなくてショックだった」
思わず、顔を歪ませた。
そんな風に思ってなんて知らなかった。…知ってたら、知ってたら覚えてるって言っただろか。
謝ろうとして口を開く前に、宮根悠些が口を開いた。
「…それに、別人みたいで最初ビビった」
でも、と言ってあたしの頬を両手優しく持ち上げた。
優しいのに、その手からは逃れられない。
「中身はやっぱ、俺の好きな綯捺のままだった」
そうしてようやく宮根悠些が笑った。
もう疑問とか、理屈とかそんなの知らない。
あたしはやっぱりこの人が好きだと、ただそう思った。
「…もし、俺に見込みがあるなら、今すぐにとは言わないから。だから、俺を好きになることを考えてほしい」
その言葉の裏に、どんな言葉があるのはあたしは知ってるよ。
こんなあたしを見て責任を感じた。それでも、好きでいてくれるんでしょう?
多分もう、昔のあたしに戻ることはない。出来ないと思う。
だけどそのおかげであたしは、案外泣き虫で優しいこの人を好きになるこができた。
「……もう、好きだバカ」
なんて可愛くないあたしの返事に、彼は子供みたいに泣き出した。
甘くて優しいキスを落として。