【短】セカンド・ラブ

「…まさか、斉藤綯捺じゃねえだろうな?」

「え。兄ちゃん、綯捺さんのこと知ってんの!?」


亜梨沙があたしから離れてお兄さんの肩を掴んで、揺らした。


「…昔、良く一緒に遊んでたんだ」


そう言ったあと、あたしはすぐに正体が誰なのか分かった。

──宮根悠些(ユウサ)、確かあたしの7つ上で、彼が此処を出るまでよく面倒を見てくれた。

なんですぐに気がつかなかったんだろう。


「綯捺さん!そうなんですか!?」


今度はあたしが揺らされた。あ、意外と気持ち悪い。


「……忘れた」


あたしは嘘を吐いた。

人と深く関わらない為には、人の顔を覚えないキャラを作り上げた。


「あー、そうえば綯捺さん、あたしがお礼言った日も覚えてませんでしたよね」

「…お前、記憶力良くなかったけ?」


眉を寄せる彼の言葉に若干、ドキリとした。


──やめて。昔のあたしはもう“死んだ”の。


だけどあたしはいつものポーカーフェイスで誤魔化した。

< 7 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop