【短】セカンド・ラブ
「…まさか、斉藤綯捺じゃねえだろうな?」
「え。兄ちゃん、綯捺さんのこと知ってんの!?」
亜梨沙があたしから離れてお兄さんの肩を掴んで、揺らした。
「…昔、良く一緒に遊んでたんだ」
そう言ったあと、あたしはすぐに正体が誰なのか分かった。
──宮根悠些(ユウサ)、確かあたしの7つ上で、彼が此処を出るまでよく面倒を見てくれた。
なんですぐに気がつかなかったんだろう。
「綯捺さん!そうなんですか!?」
今度はあたしが揺らされた。あ、意外と気持ち悪い。
「……忘れた」
あたしは嘘を吐いた。
人と深く関わらない為には、人の顔を覚えないキャラを作り上げた。
「あー、そうえば綯捺さん、あたしがお礼言った日も覚えてませんでしたよね」
「…お前、記憶力良くなかったけ?」
眉を寄せる彼の言葉に若干、ドキリとした。
──やめて。昔のあたしはもう“死んだ”の。
だけどあたしはいつものポーカーフェイスで誤魔化した。