【短】セカンド・ラブ
「人の顔はどうしても覚えられないんですよね?」
タイミング良く、亜梨沙が話してくれた。
それにあたしは深く頷いた。
「ふーん」
と、あまり興味の無さそうな返事をした後、そのまま部屋から出て行った。
「……なんで、あの人は戻ってきたの」
汚れてないあたししか知らない人が、いるのは嫌だ。
出来れば、戻ってきて欲しくなかった。
「えと、なんか東京の教師は間に合ってるからこっちに来たそうです」
「…教師?」
「はい」
無邪気に、笑った。
「因みに、何処の教師をやるか分かる?」
あたしは嫌な予感がした。
だって最近、“あそこ”の教師が辞めたらしいと聞いたから。
「はいっ!星辰学校です!」
──ああ、やっぱり。
…そこは、あたしが通ってる高校。
もうこの時点であたしの白黒の世界が歪んでいたのかもしれない。