検品母
宮下恵子は、帰ってもごはんの用意もせず、冷蔵庫から、ビールだのワインなど開け散らかして、飲みながら、ケタケタ笑っていた。
帰ってきた、箕面正一は、勤めている病院で、事件の事は聞いていたので、帰ったら恵子がシラフでないことぐらい、予想していた。
「アーハッハ!ついに来ましたかぁ。あたしゎー暴れたくても暴れられなかったけどぉー代わりに暴れてくれたんやねーケケケケケ」
恵子の心の傷については、知っているつもりでも、ここまで壊れているのを見るのは初めてだ。
正一は、さらに、ビールのカートンを開けるしかなかった。
「そんな泡の出る麦茶なんか、いりませぇーん!」
ということなので、1,8?紙パックの鬼殺しを出した。
これを恵子は、マグカップに注ぐと、一気に飲み干した。
正一は、ごはんができていないので、冷凍室のラップの冷ごはんと佃煮を出した。
「ちょっとでもぉー人と違うとぉー人間扱いされましぇーん!それくらい、人間なんて、悪意の塊ですぅーケケケケケだからぁーだれかがぁー代表になって、暴れてくれるのですぅー」
正一は、判った気がした。もともと、人間は、悪意の塊なのだ。いや、そういう面がある。健常者でも母子家庭ゆえ、そういう悪意には、慣れてきたつもりだが、やっとわかった。
最近多発する、ナイフの振り回しは、何らかのそういう素地に、火が付くだけのことなのだ。

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