検品母
山口一郎は、節税対策に両親の借りたマンションに引っ越していた。
1LDKで、まあまあ収入のある単身者用だ。
水周りもゆったりしている。
離婚手続きが済んで、親権を破棄し、緋那を養護施設に入れて。
ほんとうに、山口秀子も、あちらの両親も使い物にならないので、大変だった。
かわいかったが、あゆみは映画リングの貞子のような、化け物に感じられて、厄介払いができたと思っている。
緋那は、かわいい盛りだが、あのあゆみを育てた秀子の子だ。いつ牙を剥くかわからない。それで、泣く泣く手放した。
しかし、なんであんなことになったんだろう?
一流大学に入って、大手メーカーに入り、同期でも出世も早くて。
そうこう考えるうちに、出勤時間になった。
これも両親のツテで、別のマンションの管理人の仕事をもらっている。
定年後の人間がやるような仕事より、転職先を必死で探すこともできたが、一部面が割れているし、探す気力もなかった。かといって、起業できるスキルもない。




















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