検品母
あゆみに刺された木村薫は、ICUで未だ意識不明だった。運ばれた当初、母親の木村緑は、半狂乱で、ICUの面会時刻を待つ人々にかまわず、泣き叫んでいた。しかし、今は薬の力を借りて、何とか落ち着いている。薫は、酸素マスクと、血中酸素モニターと、尿の管と、点滴と、心電図と、血圧計と、腹腔に溜まった血を抜くドレーンを着けていた。緑と夫の久和は、ICUの面会時刻にしか、入れないが、その時必死で呼びかけていた。そして、刺されてから一週間後、薫は意識を取り戻した。
「薫、わかる?」
薫はまばたきするだけで、その他の反応は無かったけれど、緑と久和は、薫が生まれた時の様に喜んだ。その後続く修羅場も予想できず。

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