検品母
田中節子は、ビーズの作品をブログにアップした。
アクセサリーだけでなく、小物やインテリアも手がけていて、アクセス数は一日100前後。出版社から、ブログ書籍化のお誘いもきている。
で、その他に、吉平に報告する事があった。
「...でね、大阪の(泉州の人間が大阪と言うと市内の事)編集部に行かなあかんねん。それと、あの...検査薬で反応出てん。」
保育園年中の敬子を産んで以来、2人目不妊と、陰口を叩かれてきたゆえ、喜びはひとしおだ。
「ほんまか?!」
「でも、このあいだ、キンメダイ食べてしもた。」
吉平は、この間、田辺沖で、大当たりが幾つかあったのだ。
キンメダイは、妊婦に悪い。
生物濃縮が進んでいるから。
「だんないやろ。(問題ないでしょ。)どうせ俺等の世代は添加物漬けや。せやけど九割五分正常やで。」
吉平の神経は図太い。だから、公務員に向いているのかもしれない。
待遇が、いいと、やっかまれるが、その実、クレーム処理班のようなお仕事ばかり。
先日も、泉州にも南下してきた、プロ市民なるものに、コンビニにたむろする、タチの良くないお子ちゃまをどうにかしろと、吊るし上げられたばかりだ。
「キタ、キター!」
と、吉平は、ここにもイノシシが発生したかのように、のんびり構えている。
ま、そんな態度がプロ市民のお気に召さないらしく、余計いじめられたが、する事はした。
ヒマ、こいている年配者に、市民見回り隊なるものを、結成させ、動いてもらったのだ。
吉平は、キンメダイの、生物濃縮のような事が、山口秀子、あゆみの親子に起こっているのかもしれないと思った。みんなに注目されているが故。
節子は、地味で目立たないから、そんな事起こらない。




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