検品母
山口あゆみと木村薫のいた、3年3組は、授業が続いているものの、島田先生やクラスの子らが、やはり事件を思い出し、時々PTSDの症状が出たので、いつもの通りとは行かなかった。3時間目の算数の時、野口愛子が、過呼吸の発作を起こした。島田先生もそれにつられて、PTSDの発作を起こしそうになったが、必死で押さえ、ビニール袋を、愛子の口にかぶせ、過呼吸のとりあえずの処置をし、携帯を鳴らした。携帯は、事件以降、学校に詰めている、カウンセラー、倉田理恵子につながり、倉田がやって来た。
「いける?」
倉田理恵子は、島田先生から野口愛子を託されると、保健室に向かった。
クラスのみんなは、誰かにえげつない事いうたり、悪ふざけが過ぎると、誰かがまた、カッターを出しかねないと、お受験の面接に行く子みたいに、気ぃ使っていた。ここは公立で、事件以来持ち物検査があるけれど。どこのクラスにも、仲間はずれの子が、1人2人いるけれども、みんな積極的に、長い休み時間の遊びに誘っていた。子供達は仲間はずれにされた子の、怨みをわかりつつやっている。たまたまこの事件で、そういう子こそ、何をするかわからない、とみんな自衛を始めたのだ。
いや、山口あゆみがはみご=仲間はずれだったわけではない。刺したのは別の理由だ。その理由は、仲間はずれのように、小学生なら誰でもやられたり、やったりする事であった。だからこそ、子供達は、そういう事をすると、また何か起こる、とお互い変に気ぃ使っていた。図画の教科書の写真の、「麗子像」に似ていると、からかわれていた吉冨麗華も、そう言われるのは、ピタッとやんだ。














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