検品母
倉田理恵子は、思う。何処ででも陰険な人はいるからなあ。
カウンセラー御用達のご家庭のことである。
カウンセラーのところに、来ようか、ってレベルの家庭は、生活水準が高い。
ただ、なんとも言えぬ薄ら寒い感じがする。
あるクライエントは言う。
「おれ、学校のこと話しても、同和地区の直人の話しただけで、急に、オカン、黙るんや。」
「なんで?」
「かかわると、ろくなことない、ゆうて...」
「へえー。先生ら大学では、人権問題研究会にも顔出ししてて、交流あったけどなあ。」
「それだけ違う、オカンの規範に合わんものは、みんな排除。そのせいで、弟はグレたんや。」
そのクライエントは、成績のいい彼ばかりをかわいがり、出来の良くない弟を排除する事と併せて嘆くのだった。
倉田理恵子は、それを聞きつつ、私の母親と一緒だなあ、と思う。
理恵子は才色兼備の新進カウンセラーだが、リスカの跡と、吐きだこがある。



















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