検品母
山口秀子の母、山口貴美の祖母、元村弥生は、事件以来、家にひきこもっていた。弥生は、あんなにかわいいあゆみが、そういうことをした事が、自身も娘も根こそぎ否定されるようで、何をする気にもなれなかった。ただ、あゆみと過ごした思い出だけが、断片的に浮かんできた。弥生の家と貴美の家は、車で20分ほどの所だった。だから結構秀子はあゆみを連れて、やって来た。最近あゆみは、ディズニープリンセスの話ばかりしていた。あんなお姫様に夢中になる子かあんな事をするなんて・・・
元村弥生は昭和20年代の生まれで、学生運動・ニューファミリーの世代だが、弥生は結構コンサバで、現在会社役員の元村彰治朗と20代前半で結婚し、ずっと専業主婦だった。そういう影響もあってか、秀子は短大を出て、大手企業に入った。
就職して一年後。
「職場でお付き合いしている人がいるの。」
「つれてらっしゃい。」
山口一郎は、スマートで、秀子の話だと、出世頭らしい。
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