検品母
発展
森高春子は、山口あゆみを鑑別所に送り出して、ホッとしている。彼女が未だ学生の時分、わるさをする子は、ヤンキーな子のケンカの度が過ぎたもの、貧しい故の窃盗、14,5歳以上だったように思う。その上、そんなワルとデカは、ある種の心の交流があったと聞いている。にもかかわらず、山口あゆみは、かの長崎の女児を下回る3年生で、きちんとした家庭の子で、前触れもなく、である。森高春子の守備範囲外の出来事。「数少ない婦警というだけで、あんなわけわからん女の子、押し付けられて、かなわんわ。」森高春子は、山口あゆみに刺されたわけじゃないのに、PTSDが出てきつつある。パッと見には、どんな質問にも頭ブンブンするだけに見えるが、拒絶するにしても人間関係での「お約束」が通じない。「だまりこむ、にしても、礼儀あるやろ。」子供とはいえ、森高春子の今まで当然としていた心構え、立ち位置を根元から、グラグラさせてくれるものだ。「せやけど、なんでか解明するのは、私の仕事と違う。けど、気になる。」

< 27 / 114 >

この作品をシェア

pagetop