検品母
「これは、何をしてる所なんかな?」
「あたしの遊んでいるところ。」
「あゆみちゃんは、どこなんかな。」
赤い服の人形をさした。が、次に貴美は、犬の人形を床にほうった。
「なんでそんなことするん?」
「この犬ばっちい。」
「なんで?」
「ママが、皮膚病になった犬なんか、獣医代もったいないから、保健所やるゆうた。」
「ママ、そないゆうたん?」
西原は「ひどい話や。」と思いつつも、ともかく、カウンセリングでは、クライエントの反応を引き出してゆくのに、引いちゃうようなことでも、受容せねばならない。次に貴美は、黄色い服の女の人形を、床にほうった。
「今度はなんで?」
「バーバ、あんなん、きたないゆうた。」
「なんで?」
「バーバ、あれアトピーやって、きたないゆうた。」
その後も、あゆみは床に人形を落とし続けたが、その度に人形を落とし続けたが、なぜかと聞けば、「障害者」「頭のいかれた人」。あんまり、やさぐれた箱庭療法になってきたので、
西原は、「このへんに、しよか。」と、止める。箱庭も遊戯療法もあんまり、荒んだ内容になると、止めないといけない。クライエントの傷を広げるから。
「きちんとした家庭に育ったように見えるけど、偏った癖を付けられているな。」

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