検品母
吉冨麗華は、うちに帰ってから、母親の佳代子に報告した。
「あゆみちゃんとこ、届けてきたけど、なんか、あそこのお父さん、うっとしそうだった。」
「あんな事があったからねえ...」
佳代子は、170cmに合わせた外国製システムキッチンから、答えた。
「ちがう。ごっつい、そっけなく、されてん。」
佳代子は、キッチンを離れると、テーブルの処へきた。
「んまあ、子供相手に?ヤなやっちゃな。」
麗華のがっかりした気持ちを埋めるように答えた。
インターネット掲示板に書かれた一郎の悪口を思い出しながら。
「せっかく重いモン、持ってったのに...」
「ひどいわねえ。あんたみたいな子供にでも、人によって態度変えるのは、ホンマやったんやね。」
「ママ、ネット、見たん?」
「うん。お父さんから緋那ちゃんまで、卒業アルバムとか、貼りまくってた。あと、悪口も。」
佳代子は、マクビティビスケットの封を切りながら言う。
「ふうん。写真は、削除されてた。私が見たら。でも、山口一郎はヤリチン。美人しか相手にしない。と書いてあった。」
ビスケットをボロボロこぼしながら、麗華は答える。
「でしょう?ネットの事はみんなホンマって信じたらエライ目に遭うけど、本音の一部でもあるよね。」
佳代子と麗華の親子は、かの悪名高い掲示板についても、あけっぴろげに会話する。
佳代子も有害サイトをブロックしない。したところで、醜悪な人間の本音は、日本語がわかれば、耳に入ってくる。
大事なのは、それを聞いた子供ときちんと、それについて話す事。
臭いモノにフタをして、十分話し合わないほうが、むしろ、害になろう。
「麗華もネットはほどほどにして、先に宿題しなさいよ。」
佳代子は、ビスケットの屑をティッシュで集めながら注意した。
「わかった。」
麗華は、ターコイズブルーのランドセルを持って、子供部屋に上がった。




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