検品母
あぶり出し
名越育子は、風水で運気を上げるため、力を入れて、水周りを掃除していた。
建売の、オール電化の水周りは、最初はキレイだったが、汚れが目立つようになっている。
名越育子は、あんなに小奇麗に完璧な母子がああゆうことになって、いい気味半分、がっかり半分だった。
名越育子は、平凡な顔立ちに、160cm足らずの中肉。
特技や趣味もなく、30手前で、サービス業の男性と結婚し、のぞみ台に家を買って、ローンを返している。
育子は、いつも平凡な器量ゆえ、華やかな世界に入れないし、才能もないので、自分の世界を持つこともできない。娘妃美花も、成長するにつれて頬骨やエラ、口元が出てきて、出っ歯になってきた。思春期以降、骨格ができてくると、それはもっとひどくなるだろう。だから、いつも不満がブスブスと燻っていた。そんなところへ、現れたのが、山口秀子だった。とてもキレイな人で、独身時代の華やかな世界を垣間見せてくれる。名越育子は、家族ぐるみでおつきあいさせてもらった。ただ、上から目線が気になるところだった。なので、ザマミロという気分と華やかなものが失われたという、アンビバレンツがあった。私があれだけ、憧れていた世界は毒を持っているのだろうか?
ふと見ると、16畳こっきりのLDKの西の出窓の黄色い花が枯れている。
「あああ。金運まずい。また300円かかる。」
山口秀子のように華やかなフラワーアレンジメントもできず、仏花の出費にも汲々とするくらいだ。
妃美花が帰ってきた。うすいピンクのランドセルを男の子のように放り投げると、早速ipotをかける。
SMAPの世界で一つだけの花がかかる。
名越育子には、私のような冴えない家庭をほめ殺しされているような歌で苦痛だ。
♪世界で一つだけの花、その花を咲かせるために一生懸命になればいい♪


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