検品母
田中吉平は、割り切れない面倒なものは嫌いである。だから、節子が良かったのかもしれない。女なんて、やれ髪型を変えたの気づかないの、シャネルが欲しいの、面倒くさい。
その点、節子は、少々陰気なものの、地味で控えめで、うるさくない。
友人で、受付嬢をいわして、得意げになっていた者もいるが、記念日を祝えの、遊びにつれて行けの、うるさいらしい。「おまえんとこ、みたいなヨメにしといたら良かった。」なんて、露骨に言うが、そんなものは自己責任。普通の日本家屋で、アフガンハウンドが飼えないように、器量を考えて女を選ばなければなるまい。だが、男というものは、おうおうにして、ステイタスとしての女の見栄えを優先する。
しかしまあ、真昼間の文化教室が流行るのもわかると、吉平は、思う。
ほんまは、働きたいのだけれど、女性はキャリアを中断すると、元に戻れない。
戻ったところで、時給800円のレジ打ち。それすらも、取り合い。
で、田んぼなんかの第一次産業は空洞化。
それには、農協にだしたところで、農薬で洗いまくった野菜ですら、単価が安いことも絡んでいると思う。
この国は、滅ぶ。
そんな危機感を感じる。
マリーアントワネットのように、好きで遊び呆けているのとは違うゆえ、余計悲劇的だ。





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