検品母
木村薫は、遠足のとき来た山道をさまよっていた。そのうち、無人になっているお堂があったので、横になって休んだ。気が立っているので、怖くない。
夜が明けると、人の気配がする。
お坊さんらしき人が、薫を見て怪訝そうにした。
「どないしたんや。」
薫は、答えない。
お坊さんは、地域の広域で放送があり、テレビのテロップでもあった、行方不明の女の子かもしれぬ、と思った。
お坊さんは、携帯を取り出した。
「東署ですか?行方不明の女の子が、うちのお堂にいます。え?正覚寺から1km山奥。
お寺のほうに来てもらえます?」
木村薫はお坊さんに連れられて、もう一度山道を下った。
「どこの子や?」
「のぞみ台。」
「あんなとこから?どないして、ここまで?」
「遠足で来たから。」
「せやけど、真っ暗やろ...」


















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