検品母
「じゃあ。」
秀子は、趣味のいい、フェリシモのガウンを翻して、病室に戻った。
これらのお洒落なホームウエアは、秀子が頼むと、嫌々病院に宅急便を送ってきたものだ
精神病院など足を踏み入れたくないのは、相変わらずだ。
こうした患者との会話も、精神病院看護師の仕事だ。
金沢智子は、秀子と別れてから、「だからキレるのよ。」と思った。 重金属 は、中枢神経を何時の間にか、蝕んでしまう。まして、体重がない子供など...また、 野菜料理を 美味しく食べさせる食育も、母親ができていない。それは、本当に、食事自体を味わおうという精神状態をはぐくむ家庭が少ないから。夫婦の会話もできない。代わりにテレビ。食卓は見栄えと食費の相談。食卓での子供の叱責。食事すら、財産である子供のレベルアップのための仕事。
智子のそんな連想は、かつて、無理強いされた食事を思い出させ、PTSDを起こさせた。深呼吸すると、受け持ち患者の処置の確認をし、注射剤を用意し始めた。
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