検品母
小学校3年生ともなると、容姿や成績なんかでグループが分かれる。麗子像に似た吉冨麗華は、かわいい子のグループには、相手にされず、それ以外の地味な子のグループでいた。
差別・格付け意識もあるが、子どもながら、レベルの違う子同士は話が合わないからだ。
なのに、かわいい、だけで寄っていた、山口あゆみのグループは、ショックで求心性を失い、止まり木を求めて吉冨麗華の所にやってきた。
「リビング、山口あゆみちゃんとこより広いな。」
「30畳みたい。」
麗華が答える。
「うわあ。狭いアパートより広いやん。」
「山口あゆみちゃんとこは、ファンシーだったけど、ここはスタイリッシュやわあ。」
「パパもママも、ゴタついたの、イヤだから。」
山口秀子・あゆみ親子は、デコレーションが好きで、インテリアから、小物までデコだらけなのだ。玄関には、動物園をテーマにしたディスプレイ。居間には、すべてローラアーシュレイのファブリック、三段重ねのティーセット。お子様に出すおやつは、手作りのがリボンやシールに飾られたのである。
イラスト描きに飽いた子が、テーブルの主婦雑誌MATEを見始めた。
生活を楽しもうと言うコンセプトが、周りを飾り立てるということになっている雑誌だ。食材はコストコ、お弁当はデコレーション、インテリアのディスプレイ、デコ携帯電話・小物、究極はわが子も揃いのコーディネート。
「山口あゆみちゃんとこ、この本の通りなんよ。たしか3月号、お母さんと出てたよね。」
「知らん。」と、麗華。
「あんた、ホントに関心ないんやな。」
「うん。ママが仕事で要るから、何号かあるけど。」
「イラストはあんまりないよ。」
「デコレーションのアイデア、企画してるの。」
すると、一同に山口秀子・あゆみ親子が、出た位の波紋が広がった。
MATEは、親子共々、ある程度の容姿でないと出れないのだ。その、MATEを企画している、と言うと...
それでも、 麗華 は淡々としている。
< 61 / 114 >

この作品をシェア

pagetop