検品母
宮下恵子は、また、インターネットのニュースを見ながら、クツクツと笑い出した。
「なんや。」
箕面正一が、怪訝な顔をした。
リビングの隅のそれぞれのパソコン。いっしょにご飯の片付けをした後、そこで過ごすのが日課だ。
「品のよろしくないバーベキュー集団あるやん?あそこで、刺し合いやて。」
「いまどき、どんなキレた系のニュース起こっても驚かんわ。」
正一は、恵子を幼児をあやすように相手した。いつでもそうである。遊びに行っても、ベットの中でも。母子家庭とはいえ健常者で恵子からしたら苦労知らずの男にそういわれたくないと思うのだが、障害を克復するため、真面目一方で来た恵子は、術中にはまってしまう。
「でも、死者5名、重体10名、重傷者18名、軽症者...」
「飛び道具がないだけマシやな。」
こいつ、ほんま、なんとも思わんらしい...
「あたしさ、関東の方の陰険なママ友集団見てるから、さもありなん、やわ。」
「親子なんて、どこでもいっしょやろ。」
「いんや。洛北大学付属病院でも、口唇口蓋裂の患者の会でも、関東から来た親子はホトホトゆうてたわ。」
「はみごにされるの?」
「いんや、そんな甘いもんちゃう。伝染病のキャリア扱い...」
「ふーん。そこまで異質なモノを排除する集団やったら、人様とのちょっとした事でも。」
「うん。健常者どうしでも摩擦になるわけよ。」
「けど、なんで洛北大学にまで、関東から来るねん。」
「あたしのお世話になった広沢先生も、知り合いのお世話になった妻木先生も、口唇口蓋裂でも言語まで重い障害のある症例を治してきたからよ。」
「おまえ、顔面裂で、言語も殆ど聞き取れないレベルやったそうやからなあ。それが..」
「そう、広沢先生のおかげなの。」
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