検品母
山口あゆみは、原稿用紙を目の前にして、考えあぐねていた。小奇麗に完璧にと追い立ててくる、母、山口秀子の躾に慣れていたので、規則正しい生活くらい、なんでもない。
が、 母について書けと?難儀なことになったな。
そのうち、教官が原稿用紙を集めにかかった。
が、 山口あゆみのが白紙であるとわかると、後でこちらへ来るように言われた。
「どうして一行も書けないの?学校の勉強はできたのでしょう?」
「...。」
「次の畑での作業はいいから、書けるまでここにいなさい。」
といって、残された。
本当に、困ったことになったな。
教官は、窓越しに少女たちの作業を見ている。
尖らせた鉛筆が余計プレッシャーになる。
やがて、しぶしぶ書き出した。






















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