検品母
同じころ、宮下恵子は、勤め先の休憩室でお弁当を食べていた。
「加害少女のお母さんと、宮下さん、友達なんでしょ?」
看護師、は、また面白い情報を引き出そうと声をかけた。言語療法士などパラメディカルは同じ部屋で休憩する。
「たまたま近所で、同じクラスだっただけ。随分いやな思いさせられたわ。」
一応、医療職として、知りえた情報は言ってはならないが、プライベートでなおかつ恨み骨髄の人間に対しては例外だ。
「どんな?」
「私達がお世話をしているお子さんが言うとおりの事よ。目を泳がせてるふりして、何気なく口元を見てくる。そのくせ、一緒に遊ぼうとしない。」
「ひどいなあ。でも、あなた、大阪南部はある程度どんな子でも受け入れる気質やゆうたけど。えげつないのは、どこでもおるものねえ。」
「それでも、なまぬるい差別はあったよ。関東のハイソサエティーの問答無用の差別とは、別格だけど。」
宮下恵子は、うちが、口蓋裂の手術が進んでへんときやったら、コイツ、相手してくれへんタイプの女やな。
と、なまぬるくオチしながら、相手をしてやりながら、思い出した。











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