検品母
島田先生は、出席を取ると、木村薫ちゃんが休みのことがわかった。
教室に入ってきて、誰か足りないなあ、と言う雰囲気はあったけれど。
「木村薫ちゃん、お休みですね。おうちから、連絡はありません。」
島田先生が言うと、クラスでも華やかな感じの女子が、何人かニヤニヤしている。
ったく、女の子は小学生でも変ないやらしさがあるんだから。
「ニヤついてないで、言いたい事があればいいなさい。」
すると、一人がこういった。
「あんな事して。出て来れないわよ。」
すると、他の女子も、顔を見合わせている。
「具体的に、ちゃんといいなさい。」
「はい。木村薫ちゃんは、家出中に、ニートのお兄さんとエッチしたんです。」
すると、男子までが、甲高い叫び声を出して騒ぎ出した。
「静かに!あなた自身が木村薫ちゃんがそうしている所を見たのですか?」
「いいえ、でも、お母さんも、お父さんもバーバも言うもの。」
これだ、と、島田先生は、思った。
子ども自身は、明るい子も、静かな子も、乱暴な子もいて、多種多様でそれでいい。
しかし、その子達を育てる親や祖父母達が、余計な事を吹き込んで楽しむのだ。
おのれの、思い通りにならぬ生活のうっぷんを晴らすために。
昔から、そんな傾向はあるが、まだ、「子どもに言ってはいけない事。」という雰囲気があったのに。
「いくら、周りの人がどう言おうと、その目で見た事でない事を、本当の事のように言ってはいけません。」
島田先生は、そうして、朝の会を何とか収めると、国語の授業に入った。









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