検品母
のぞみ台の公園では、そろそろ日も傾きかけているのに、ママ友が寄っていた。
「何、また保護者会やて。わがの子ぉも管理でけへん親のフォローかいな。」
ボスママ、北野和代が言うと、一同は苦虫をつぶしたように笑った。
「まあ、薫ちゃんが悪さしてるしてないは別として、みそぎやな。」
春山優子は、したり顔だ。
「でも、そんな事したところで、うわさは消えないし。」
名越育子は、吐き捨てる。
「わが等の方が、不登校教室でもフリースクールでも行ったらええんや。」
と宝明子。
だが、名越育子は、否定する。
「子どもを地域で育てる、がお題目だもの。」
「シッ!」
北野和代が、見張りのメス猿のように制した。
見ると、吉冨麗華が、ターコイズブルーのランドセルを背負って、歩いている。
宝明子は、猫なぜ声で言った。
「今日も、木村薫ちゃんとこ?お疲れ様。」
吉冨麗華は、わざと田舎の言葉を知らない、少年のようにうなずくと、スタスタ走り去った。
吉冨麗華が、去った後、一同はまた話をぶり返した。
「あの子も大変やな。来るはずもない子の面倒押し付けられて。」
名越育子は、自分の子といっしょになって、「麗子像」と言っていた事も忘れて、つぶやいた。




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