検品母
学校を休んだ木村薫は、あの保護された正覚寺にきていた。
街中に出ると、イヤな同級生のオバハンに遭遇するし、かといって、篭っているのも、息が詰まりそうだ。
薫の脱走に懲りた親が、GPS機能付きケータイを持たせているので、安心だ。
ダラダラした上り坂を上り詰めると、お寺だ。
声を掛けると、住職が出てきた。
「ああ、元気にしとったか?」
住職は、「学校は?」と、何回これまで聞いたかわからないセリフは、言わなかった。
本堂で、阿弥陀如来に手を合わせてから、奥さんが淹れてくれたお茶と和菓子をいただいた。
「住職は、どうして、お坊さんになったの?」
「うちが寺やったから。」
それから、お寺での行事の事、通っていた宗門の大学の事、本山の永平寺の事などを話してくれた。
難しい事はよくわからなかったが、「あたりまえの事をあたりまえにやる。」という言葉だけが、耳に残った。



















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