【 側にいるよと笑うから 】
1人、生徒玄関の施錠時間ギリギリまで自主練をする。
基本的に何事も流してしまう性格だが、剣道については妥協なんてできない。
自分が納得いくまで、ひたすらに練習をし続ける。
「ぐへっ。」
汗でか、床が滑って転んだ。
面を外し、荒い呼吸を整えようと必死に息を取り込む。
腕がぴくりとも動かない。いつものことだが、厳しい練習後の妥協なしの自主練。きつい。つらい。
「だれかぁ――起こして――...なんてね。」
声が反響する。
もう他に部員なんていないのだから、自力で起き上がらなくてわ。仕方なく体に力を込めようとしたとき、目の前に手が差し出された。
「ほら。」