お見合い恋愛
俺は自分の手を引っ込め、その代わり打ちポケットからハンカチを取り出して

唯香さんの前に差し出した。


「・・・お見合いの件はこちらでなんとかします。でも・・・」


そう言って、財布に入れてあった予備の名刺を取り出しハンカチと一緒にその手に握らせた。


「・・・つらくなったら連絡してください。必ず助けに行きますから」


俺はそれだけ言うと、唯香さんの返事を待たずにベンチから立ち上がった。


「今日は会えて嬉しかったです。また会社で」


唯香さんを見ないまま、足早にその場を去る。


公園の出口まであと少しというところで、不意に唯香さんが叫んだ。


「・・・ありがとう!!」


唯香さんのその言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。

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