お見合い恋愛
「いらっしゃい」


俺は、笑顔でタクシーから降りた唯香さんを出迎えた。



「・・・ここ・・・って・・」


僕の後ろを見上げた瞬間、唯香さんの顔が不安げに曇る。


「僕のマンションですよ」


「え?」


「あ、ちょっと見てもらいたくて・・・誓って何もしませんから、あがってもらえませんか?」


「え、ええ・・・」

唯香さんは不安そうにしながらも、静かに俺のあとをついてきた。





エントランスを通り、目の前にあるエレベーターに乗り込む。


すると、それまで沈黙を保っていた唯香さんが口を開いた。


「まさか、ご自宅だとは思わなかったので・・・すごく緊張します」



そう言って俺を見上げる顔が困っているのに、すごく可愛くて・・・

何もしない、と言った手前何もできないけど、思わずその手を握ってしまいそうになった。
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