空と雨


「あたし、は」


「愛ちゃんもいるんだから幸せに決まってるじゃない」


え?

そこにゆいが現れた。
ゆいは眉間にしわをよせ、菜穂を睨むように仁王立ちする。


「…ゆい、久しぶり」


そんなゆいに挑発するように
菜穂は冷静にゆいを見つめる。

「ゆい、やめて」


「……、潤あっち行こう」


ゆいは潤の腕をひいてみんながいる場所へと足を進ませた。

“幸せ?”


菜穂…
あなたにとってあたしは幸せそうに見えてないかもしれない。


…あたしは“幸せ”がわからなくなった。

全てを失ったあの日から。


心のそこからでてきた笑顔も愛することも、愛されることの意味も…全て失ったあの日から。


ねぇ、雨になって還ってきたならあたしを抱きしめて……?

いっぱいキスもして……?


愛だって待ってるのに───…
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