三日月の下、君に恋した
17.かわいくない
会議は滞りなく進んでいった。
プロジェクターからスクリーンに映し出される資料に沿って、航がおおまかな企画内容と、各部署との連携を含めたスケジュールを簡潔に説明していく。
時折メモをとる人もいたけれど、出席者のほとんどは黙って彼の説明に耳を傾けていた。
今回の企画について聞かされるのは、営業企画部のメンバー以外は誰もが初めてで、いつになく大掛かりな内容にみんな少し戸惑っているようだった。
おまけに、葛城リョウがひとことも言葉を発しない。
いつ彼の毒舌が猛威を振るうのかと、居合わせた面々はどこかようすをうかがっているふしがある。
それなのに、会議が始まって四十分近く経っても、彼は押し黙ったままだ。それがかえって不気味だった。
菜生は、葛城リョウという人物がどういう人間なのか、わからなくなっていた。
世間やマスコミが烙印を押したように、ほんとうに、作品から受ける印象とは異なる別の人格の持ち主なんだろうか。