三日月の下、君に恋した
18.夢は教える
ここはどこだろう。
あたりは薄暗くて湿っぽく、冷たい空気に満たされていた。
さまざまな生物の匂いが、鼻腔にからみつく。
平穏な静けさを破る大きな音と共に、乱暴な気配が近づいてくる。
人間の男の子だ。
湿った木の葉の影に身を隠して、じっとようすを窺う。
何かから身を守るように、彼はボロ切れのようなマントで全身をくるんでいた。恐れをみとめない頑なな表情で、一歩ずつ足を踏みしめ、人の道などない森の中を進んでいく。
どこへ行くのか気になって、彼のあとをついていくことにした。
ここは昼間でも薄暗い。
成長した樹木の枝葉がみっしりと重なり合う高みの向こうに、おぼろげな光が見えるだけ。遠い空の果てで、ノスリが鳴いている。空は手の届かないところにある。
男の子はしばらく黙って歩き続けていたけれど、ふいに足を止めた。きょろきょろとあたりを見回し、歩いてきた方向をじっと見つめ、最後に見えない空を見上げた。