三日月の下、君に恋した
「菜生さんってば」
すぐ近くでびっくりするほど大きな声がして、菜生は目を覚ました。
「もう。こんなとこでうたた寝したら、風邪ひきますよ」
自分がリビングのソファに横たわっていることに気づいて、菜生はゆっくり起き上がった。時計を見ると十一時過ぎだった。
「美也ちゃん……今帰ったの? ご飯食べた?」
美也子はジャケットを脱ぎながら、「同期の子と食べてきました」と言う。
「友野くん?」
「ハイ。何か、かなりヤバイみたいですよ、あの企画」
美也子はキッチンの冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのペットボトルを取りだし、キャップを取るとそのまま口をつけてごくごく飲んだ。
「営業企画部の中でも、ひそかに反対してる人が多いんだって。早瀬さんは強引に押し通そうとしてるみたいですけど。まわりが非協力的じゃ、うまくいかないんじゃないですか。どうするつもりなんですかねー」
今日の昼間の会議でも、それは何となく感じていた。