三日月の下、君に恋した
葛城リョウが前回の作品を発表してから、3年もの時間が経っている。わざわざこの土地を題材に選んだことには、何か特別な理由があるのだろうか。
「本当にこの住所? 間違いない?」
運転手が聞いた。道はますます緑濃い山の奥に分け入り、細く険しくなっていた。
「この先は車は通れないよ。このあたりに家なんて見あたらないけど……」
「この道は、どこに続いてるんですか」
右手に、舗装されていない一本の細い道が山の上に向かって伸びていた。車が一台ぎりぎりで通れるほどの狭い道で、運転手は「さあ……」と、こころもとない返事をした。
「行ってみてもらえませんか」
運転手はおそるおそるハンドルを切り、山道へ入っていった。
タイヤがざらざらと音をたて、急な坂をのぼっていく。道の左右を占める鬱蒼とした森のせいで、あたりは日が暮れたように暗くなった。道はどこまでも続いているようだった。
「この先に家なんて……」
不安げな口調で運転手が言いかけたとき、目の前がさっと開けた。広い空の下に段々畑が広がっていた。山の中腹には一軒の家が見える。
菜生はタクシーを待たせたまま、家の前まで歩いていった。最近建て直したのか、比較的新しい家だった。眼下に広がる段々畑や山の風景とは、不釣り合いな感じがする。
表札は「北原」だった。
「本当にこの住所? 間違いない?」
運転手が聞いた。道はますます緑濃い山の奥に分け入り、細く険しくなっていた。
「この先は車は通れないよ。このあたりに家なんて見あたらないけど……」
「この道は、どこに続いてるんですか」
右手に、舗装されていない一本の細い道が山の上に向かって伸びていた。車が一台ぎりぎりで通れるほどの狭い道で、運転手は「さあ……」と、こころもとない返事をした。
「行ってみてもらえませんか」
運転手はおそるおそるハンドルを切り、山道へ入っていった。
タイヤがざらざらと音をたて、急な坂をのぼっていく。道の左右を占める鬱蒼とした森のせいで、あたりは日が暮れたように暗くなった。道はどこまでも続いているようだった。
「この先に家なんて……」
不安げな口調で運転手が言いかけたとき、目の前がさっと開けた。広い空の下に段々畑が広がっていた。山の中腹には一軒の家が見える。
菜生はタクシーを待たせたまま、家の前まで歩いていった。最近建て直したのか、比較的新しい家だった。眼下に広がる段々畑や山の風景とは、不釣り合いな感じがする。
表札は「北原」だった。