三日月の下、君に恋した
「葛城先生は、前にも早瀬と仕事をしたことがあるんですよね」


 並んで歩いている葛城リョウの横顔を見上げたとき、一瞬、サングラスの隙間から透きとおったグレーの瞳が見えた。

 やっぱりきれいな目だと菜生は思った。彼がこちらを向いたので、すぐに見えなくなってしまったけれど。


「あいつがそう言ったのか?」

「え? はい。ちがうんですか」

「いーや。ちがわねーよ」

「それじゃ、プライベートでも会うことがあるんですか?」


 質問には答えず、彼は菜生をじっと見下ろして「何で?」と聞いた。


「親しそうに見えましたから……何となく、ですけど」


 彼は突然サングラスを外して、革ジャンの胸ポケットに入れた。その瞬間から、すれちがう人の視線が彼の顔に集中した。

 大通りに出たので、人の数が増えていた。

 男も女も、年齢さえも関係なく、誰もがひきつけられるように、彼の顔に目を奪われているのがわかる。


「一緒に仕事をするようになったのは、なりゆきだ」

「え?」
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