三日月の下、君に恋した
 待っていたのは、それを確かめるためだったのかと思うとがっかりした。さっきから、彼の態度がよそよそしいのも気にかかる。

 でも、そういう態度をとっているのは、自分の方かもしれないと思う。気づかないうちに、不自然になっているのかも。


 言葉にできない想いが、胸に溜まりすぎている気がする。このまま溜めこんでしまったら、今よりもっと、自然に接することができなくなる。お互いに。


 菜生は隣に立っている航の横顔を見た。無表情で、何を考えているのかわからなかった。それに、さっきは気づかなかったけれど、何となく疲れているようだ。

「何?」

 じっと見ていたので、航が面倒そうにこちらを向いた。


「顔色が少し……」

「ああ。寝不足。たぶん」


 他人ごとのように答える。声がかすれていた。エレベーターの扉が開いたので、二人で乗りこむ。

「誰かと一緒だったんじゃないの?」

 唐突に低い声が響いた。


「え?」

「週末。北原まなみに会いに行くって言ってたけど」


 航は階数表示を見上げたまま、こちらを見ない。質問の意味がよくわからない。
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