三日月の下、君に恋した
「メモのことですか? あれがあると便利なんですよ、結構」
「あんなにたくさん、必要なのかねえ。まるで教習所みたいだ」
「忘れっぽいたちなもんで」
「ふーん」
まさか、個人フォルダの中を覗かれるとは思わなかった。
社内外を含めてデータのやりとりが多い営業企画部の面々は、増えつづける膨大な量のデータをいちいち細かく分類しないし、フォルダの整理なんかしている時間も余裕も習慣もない。
当然のごとく、個人フォルダの中は、自分だけにしかわからない複雑な巨大迷路と化しているのだった。誰でもアクセスできると言っても、ほとんどの場合、希望の目的地にたどり着けるのは本人のみである。
要するに、どのデータがどこにあるかは、フォルダの持ち主である本人にしかわからないのだ。
だから、よほどの理由がないかぎり、他人のフォルダの中に入ってみようなんて誰も考えない。
「自分のためじゃないんだろ?」
部長のデスクの上に積まれた資料の束を、無造作にぱらぱらめくりながら、山路は言った。
「あんなにたくさん、必要なのかねえ。まるで教習所みたいだ」
「忘れっぽいたちなもんで」
「ふーん」
まさか、個人フォルダの中を覗かれるとは思わなかった。
社内外を含めてデータのやりとりが多い営業企画部の面々は、増えつづける膨大な量のデータをいちいち細かく分類しないし、フォルダの整理なんかしている時間も余裕も習慣もない。
当然のごとく、個人フォルダの中は、自分だけにしかわからない複雑な巨大迷路と化しているのだった。誰でもアクセスできると言っても、ほとんどの場合、希望の目的地にたどり着けるのは本人のみである。
要するに、どのデータがどこにあるかは、フォルダの持ち主である本人にしかわからないのだ。
だから、よほどの理由がないかぎり、他人のフォルダの中に入ってみようなんて誰も考えない。
「自分のためじゃないんだろ?」
部長のデスクの上に積まれた資料の束を、無造作にぱらぱらめくりながら、山路は言った。