三日月の下、君に恋した
「友野君、もし早瀬さんから連絡があったら、私の携帯に連絡してくださいって伝えてくれない?」

「えっ。あ、はい。わかりました。あっ、沖原さん」

「何?」


 太一が話すのをためらう気配を察して、山路が「じゃーな」と言い残してその場を離れていく。菜生とふたりきりになると、太一はほっとしたように話し出した。


「きのう、怒ってました? 美也子」


「あれ、友野君も一緒だったんだ。何かあったの? めずらしく悪酔いしてて、ちょっとびっくりした」

「実はその、参加した男のひとりと言い合いになっちゃって」


 太一は言いにくそうに声をひそめた。

「美也子って、嫌なこととかはっきり言うでしょ。言い方もきついし。そういうのがKYだって言われて、あいつマジでキレちゃって。みんなしらけるし、もうさんざんで」

 その場のようすが目に浮かぶようだ。太一はうつむき加減に話を続ける。


「で、そのー。俺としては美也子をフォローしたかったんだけど、うまくできなくて。それで……怒ってるんじゃないかと」

「それはないと思うなあ」

 菜生が言うと、太一はびっくりしたように顔を上げた。

「美也ちゃんて、嫌うときはトコトンだけど、そういうひねくれた逆恨みとかってしない感じじゃない? たぶんそのケンカした相手の人のことはすっごく怒ってると思うけど、友野君のことは何とも思ってないんじゃないかなあ」

 太一は「そうですね」と言って、子供みたいな笑顔になった。
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