三日月の下、君に恋した
「やっぱり、沖原さんて美也子のことよくわかってますね」

「まあ……職場でも家でも一緒だから」


 自分でもよく続いているなあと思う。


 美也子と暮らす前は、ひとりでいることに慣れて、誰かといろいろなことを共有するのが苦痛になっていた。

 他人との距離をいつも意識して保ってきたのに、知らないうちに平気になって、一緒に何かすることが楽しいとさえ思えるようになったのは、たぶん美也子のおかげだと思う。


「でも美也子、心配してましたよ。沖原さんが出ていくんじゃないかって」

「えっ何で?」

「ほら、そのー。彼氏できたから」


 菜生は一瞬混乱した。


「それ誰の話?」

「沖原さん」


 さっと胸に冷たい予感が走って、菜生はおそるおそる聞いた。

「その話、美也ちゃんから聞いたの?」


「そうですけど……あっ、何かマズかったですか。余計なことしゃべっちゃったかな俺」

「あのね、もしかして、それって、早瀬さんにも話した?」

「話してませんよ」

 ほっとする。握りしめた手の中が汗ばんでいる。


「つか、一緒に聞きましたから。食堂で」
< 181 / 246 >

この作品をシェア

pagetop