三日月の下、君に恋した
社員専用出口から外に出ると、ビルのまわりは真っ暗だった。
オフィス街なので休日は人がいない。夜ともなると、あたり一帯が廃墟のように闇と静寂をまとう。
正面にまわるとカフェはすぐに目についた。無人の街の中で、そこだけ明るい光に包まれている。
歩いている人は誰もいないのに、店の中には何人か客がいて、楽しそうに談笑しているのが見えた。
菜生は、店の前にひとりで立っていた。店の灯りと夜の闇がまじりあうその場所で、ぼんやりと佇む彼女は、ひどく不安げでたよりなく見えた。
航が走っていくと、彼女が足音に気づいてこちらを向いた。ぱっと笑顔に変わる。
彼女が何か言う前に、抱きしめていた。
抑えることができなくて、両腕に力をこめた。華奢な体が航の腕の中にすっぽりとおさまり、懐かしい匂いのするあたたかくやわらかなぬくもりに変わる。
「会社にいるって、何でわかったの?」
「……と、友野くんが……教えてくれて」
菜生がためらいがちに離れようとしたので、さらに力をこめて抱きしめた。
オフィス街なので休日は人がいない。夜ともなると、あたり一帯が廃墟のように闇と静寂をまとう。
正面にまわるとカフェはすぐに目についた。無人の街の中で、そこだけ明るい光に包まれている。
歩いている人は誰もいないのに、店の中には何人か客がいて、楽しそうに談笑しているのが見えた。
菜生は、店の前にひとりで立っていた。店の灯りと夜の闇がまじりあうその場所で、ぼんやりと佇む彼女は、ひどく不安げでたよりなく見えた。
航が走っていくと、彼女が足音に気づいてこちらを向いた。ぱっと笑顔に変わる。
彼女が何か言う前に、抱きしめていた。
抑えることができなくて、両腕に力をこめた。華奢な体が航の腕の中にすっぽりとおさまり、懐かしい匂いのするあたたかくやわらかなぬくもりに変わる。
「会社にいるって、何でわかったの?」
「……と、友野くんが……教えてくれて」
菜生がためらいがちに離れようとしたので、さらに力をこめて抱きしめた。