三日月の下、君に恋した
「あの……早瀬さん」

「何」

「み、見られてますよ」

「いい」

「でも」

「いいからっ」


 菜生が苦しそうなのはわかっているのに、腕の力をゆるめることができない。


「このまま……一緒にいたい。明日まで」


 声にするのさえ苦しくて、菜生の耳に届いたかどうかもわからない。熱と情欲に支配された体は言うことをきかない。たった今、この街が粉々に砕け散っても、離せそうにない。

 菜生の体から拒む力が消えた。子供のように、しがみついてくる。

 やわらかい髪に頬をおしつけると、菜生がふるえる声でつぶやいた。


「ずっと一緒にいる」





 ホテルの部屋に入ったとたんに、キスで唇をふさがれた。

 カフェの前で抱きしめられたときに航のようすが変だと気づいて、確かめようと思ったのに、全身に襲いかかる感覚の嵐に思考が振り飛ばされてしまう。
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