三日月の下、君に恋した
葛城リョウは勝手知ったるようすで錆びた黒い門を開け、なぜか玄関を無視して庭にまわる。菜生は玄関に掲げられた表札が「早瀬」であることを確認して、足が動かなくなった。
「さっさと来い」
庭のほうから呼ぶ声が聞こえ、菜生はおそるおそる家の角を曲がった。
庭はまったく手入れをされていないらしく、雑草が伸び放題だった。みごとな桜の木が一本、繁茂する雑草の中で存在感を示していた。
「おうい」
葛城リョウは家の中に向かって声をかけた。靴を脱ぎ飛ばして縁側から上がりこみ、しばらく家の中を探し回っていたが、不機嫌そうな顔つきでもどってきた。携帯電話を手にしている。いつのまにかサングラスをはずしている。
「あの野郎。どこ行きやがった」
菜生はきれいに磨きこまれた縁側から、そっと家の中をのぞきこんだ。
年代を感じさせる、古い日本家屋独特の匂いがした。襖で仕切られた和室は薄暗く、人の気配はどこにも感じられなかったけれども、置いてある家具や日用品は住んでいる人の生活を感じさせるものばかりだった。
「クソッ。電源切ってやがる」
葛城リョウが縁側に立ち、悪態をつく。庭先に立ちつくしたまま放心する菜生を見て、しばらく考えこんだあと、「ちょっと来てくれ」と言った。
「さっさと来い」
庭のほうから呼ぶ声が聞こえ、菜生はおそるおそる家の角を曲がった。
庭はまったく手入れをされていないらしく、雑草が伸び放題だった。みごとな桜の木が一本、繁茂する雑草の中で存在感を示していた。
「おうい」
葛城リョウは家の中に向かって声をかけた。靴を脱ぎ飛ばして縁側から上がりこみ、しばらく家の中を探し回っていたが、不機嫌そうな顔つきでもどってきた。携帯電話を手にしている。いつのまにかサングラスをはずしている。
「あの野郎。どこ行きやがった」
菜生はきれいに磨きこまれた縁側から、そっと家の中をのぞきこんだ。
年代を感じさせる、古い日本家屋独特の匂いがした。襖で仕切られた和室は薄暗く、人の気配はどこにも感じられなかったけれども、置いてある家具や日用品は住んでいる人の生活を感じさせるものばかりだった。
「クソッ。電源切ってやがる」
葛城リョウが縁側に立ち、悪態をつく。庭先に立ちつくしたまま放心する菜生を見て、しばらく考えこんだあと、「ちょっと来てくれ」と言った。