三日月の下、君に恋した
「私……帰ります」
耐えきれなくなったように、菜生がかすれた声でつぶやいた。
「ほんとに……ごめんなさい」
「謝らなくていいから」
目をそらして部屋を出ようとした菜生が、びくっとして硬直した。
「謝ってもらう資格なんてない。最初から……はじめて話したときから、俺はきみを騙してた」
菜生がおそるおそる顔を上げた。涙があふれて頬をつたっていた。目も鼻も真っ赤で、体じゅうふるえていた。
逃げていたのは──こんなふうに泣かせることに、耐えられなかったからだ。傷つけたくないと思っていたのに、結局それを選んだのは自分だ。
彼女が傷つくところを見たくなかった。
自分のせいで、彼女が泣くところを見たくなかった。
……違う。
ほんとうに耐えられなかったのは、許してもらえないことだったのかもしれない。
「ごめん」
どうして、忘れられると思ったのだろう。
会わなければ、いつか忘れる。忘れられると思っていた。
でも、無理だ。
耐えきれなくなったように、菜生がかすれた声でつぶやいた。
「ほんとに……ごめんなさい」
「謝らなくていいから」
目をそらして部屋を出ようとした菜生が、びくっとして硬直した。
「謝ってもらう資格なんてない。最初から……はじめて話したときから、俺はきみを騙してた」
菜生がおそるおそる顔を上げた。涙があふれて頬をつたっていた。目も鼻も真っ赤で、体じゅうふるえていた。
逃げていたのは──こんなふうに泣かせることに、耐えられなかったからだ。傷つけたくないと思っていたのに、結局それを選んだのは自分だ。
彼女が傷つくところを見たくなかった。
自分のせいで、彼女が泣くところを見たくなかった。
……違う。
ほんとうに耐えられなかったのは、許してもらえないことだったのかもしれない。
「ごめん」
どうして、忘れられると思ったのだろう。
会わなければ、いつか忘れる。忘れられると思っていた。
でも、無理だ。