三日月の下、君に恋した
菜生は自分の認めたくない本心に気づいて、ますますみじめな気持ちになった。
忘れられないことくらい、わかっていたのだ。どうやったって、あの夜のことを忘れることはできない。
そして彼にも、忘れてほしくなどなかった。
食堂の手前で、菜生は自然に足を止めた。
忘れるなんて、ありえるのだろうか?
あのとき、彼が何度も名前を呼んだのをおぼえている。
たった一度しか名乗らなかったのに、彼はちゃんとおぼえていて、菜生の耳や首に唇をおしあてながら何度も呼んだ。そのたびに菜生の深いところが反応して彼を包みこみ、さらに奥深くへと誘うのを知っているように。
忘れたふりを、された?
それは、菜生が受け入れられないほど残酷で冷たい仕打ちだった。たぶん、彼自身が想像しているよりもずっと深く、菜生は傷ついていた。
それこそが彼の本意だったとしたら、効果は絶大だ。
忘れられないことくらい、わかっていたのだ。どうやったって、あの夜のことを忘れることはできない。
そして彼にも、忘れてほしくなどなかった。
食堂の手前で、菜生は自然に足を止めた。
忘れるなんて、ありえるのだろうか?
あのとき、彼が何度も名前を呼んだのをおぼえている。
たった一度しか名乗らなかったのに、彼はちゃんとおぼえていて、菜生の耳や首に唇をおしあてながら何度も呼んだ。そのたびに菜生の深いところが反応して彼を包みこみ、さらに奥深くへと誘うのを知っているように。
忘れたふりを、された?
それは、菜生が受け入れられないほど残酷で冷たい仕打ちだった。たぶん、彼自身が想像しているよりもずっと深く、菜生は傷ついていた。
それこそが彼の本意だったとしたら、効果は絶大だ。