三日月の下、君に恋した
翌朝、航は菜生のパソコンにメールを送った。
社内メールなんて使いたくなかったのだが、ほかに彼女に連絡する手段がなかった。
例のハンカチのことを書くと、すぐに返信がきた。
昼休みに会議室で会うことにした。八階の会議室なら、ほとんど使われることがないので人に見られる心配もない。
会わずにすむ方法なら、いくらでもあった。
友野太一は彼女のルームメイトと仲が良いみたいだし、わたしてほしいと頼めば、きっとこころよく引き受けてくれるはずだ。社内便で送りつけるという手もある。
そうするべきだと思う。
でも、会いたくてしょうがない。
大きな力を持った魔物のように自分の中心を支配するその気持ちを、無視することも抑えつけることも不可能だった。