三日月の下、君に恋した
誤解です、と言おうとした。
でも、その前に彼が背を向けた。
「内容についてはあとで提示する。とりあえず、これを」
梶専務は机の引き出しから薄い箱のようなものを取りだし、菜生の前のテーブルに置いた。きれいにラッピングされて、リボンまでついている。
何がなんだかわからない。
菜生が尋ねようとすると、こっちの言葉を待たずに専務が口を開く。そのくりかえし。暴力的なことは何もされていないのに、強い力でねじふせられているような気がした。
「開けてみるといい」
彼は尊大な口調で言い、言葉を失った菜生を面白そうに見下ろしている。
箱の中身は、高級ブランドのハンカチだった。色は上品な薄いピンクで、精巧なレース飾りが縁についている。大人の女性が持つハンカチだ。
菜生が思いきって何か言いかけるのを、梶専務は今度もまた強い口調で遮った。
「きみ、あのときのハンカチを今も持ってるのかな?」
「あ……はい」
ここへ来る前、無事にすむように願掛けをして上着のポケットにしのばせてきたのだ。
でも、その前に彼が背を向けた。
「内容についてはあとで提示する。とりあえず、これを」
梶専務は机の引き出しから薄い箱のようなものを取りだし、菜生の前のテーブルに置いた。きれいにラッピングされて、リボンまでついている。
何がなんだかわからない。
菜生が尋ねようとすると、こっちの言葉を待たずに専務が口を開く。そのくりかえし。暴力的なことは何もされていないのに、強い力でねじふせられているような気がした。
「開けてみるといい」
彼は尊大な口調で言い、言葉を失った菜生を面白そうに見下ろしている。
箱の中身は、高級ブランドのハンカチだった。色は上品な薄いピンクで、精巧なレース飾りが縁についている。大人の女性が持つハンカチだ。
菜生が思いきって何か言いかけるのを、梶専務は今度もまた強い口調で遮った。
「きみ、あのときのハンカチを今も持ってるのかな?」
「あ……はい」
ここへ来る前、無事にすむように願掛けをして上着のポケットにしのばせてきたのだ。